竹富島 コンドイ浜 〜勝ち組の定義〜

 

以前、職場の後輩が言っていた。「沖縄に訪ねる友人がいる人は勝ち組ですよ」と。「沖縄に移住した人が勝ち組ではなく?」と聞き返したら「移住した人を訪ねることができる人ですと」もう一度言われた。

3月の中旬、石垣島で10日ばかり滞在することになった。石垣島に旅仲間が移住したのだ。後輩にとって、そんな友人を訪ねて沖縄に行ける僕は、やっぱり勝ち組みということになるだろう。


勝ち組かどうかは置いておいて、この海を見れるのはたしかに贅沢。

 

竹富島の時間

滞在して何日目かの夜、「明日は晴れみたいだから竹富島にでも行ってみよう」仲間3人と話しあっていた。沖縄は天気予報も当てにならないし、ましてや3月の沖縄はオフシーズン。ここまでの滞在中毎日雨が降ったりやんだりで、天気予報にはもれなく裏切られ頭上はどんより厚めの曇に覆われていた。

ただこの日は裏切られるという予想が裏切られ、沖縄にきてから一番の青空が広がった。やっぱり南の島は青空がよく似合う。石垣島からフェリーに乗り込むと、15分後には、もう竹富島の船着き場。たくさん並ぶデイゴの木の下を歩いて集落へ向かう。


竹富島に初上陸。


青空にデイゴの赤が映える。


ゆっくりとした時間が流れる竹富島の一風景。

 

島では自転車を借りる人が多い中、僕たちは歩いて美しいという噂のコンドイ浜のある西海岸を目指す。3月だというのに晴れたらもう真夏のようで、じんわりと太陽の日差しに灼かれる感覚を肌に感じる。頭上の木ががさっと音がした。またカラスかと思ったら(こちらはカラスが多い)、鳩のよう。でも様子が違う。調べてみたらリュウキュウズアカアオバトという種類らしい。


地元の子だろうか。一人でせっせと地面に絵を描いている。


オリーブ色の羽が特徴のリュウキュウズアカアオバト


猫は晴れて暑くなる日は日陰でお休み中。

 

ひらひらと蝶々が目の前を横切った、オオゴマダラだ。日本では最大級の大きさの蝶らしい。大きな羽をやさしく使って飛ぶのが特徴。蝶を視界から外さないように、目で追うと、その先にはリュウキュウアサギマダラ、シロオビアゲハが花に留まっていた。

こんなにゆっくりと蝶を見たのなんて何年ぶりだろうなあなんて思いながら、恐る恐る写真を撮りながら距離を詰める。「意外にいけるもんだなあ」とカメラを構えたら、ファインダーの中にはもう蝶の姿はなく、頭上の青空をまたふんわりと漂っていた。


オオゴマダラ。重い体で花に留まるとメトロノームのように左右に揺れた。


リュウキュウアサギマダラ。一見地味だけど太陽の光を浴びるとブルーの模様が美しい。


シロオビアゲハ。一番敏感で近寄るとすぐにつがいで飛んでいた。

 

コンドイ浜で出会ったおじさん

コンドイ浜は噂通りの美しさだった。どこまでも透き通り、宝石がばらまかれたように輝く光景が広がっている。静かな場所を探して波打ち際をパシャパシャ音を立てて歩く。すると海の中に一部分だけ盛り上がった浜があることに気がついた。潮が引いている今は歩いて渡れそうで、数名の人影が見える。


入口付近は人で賑わっていた。


海の中にできたビーチ

 

短パンの裾を捲り上げて、じゃぶじゃぶと海の中にある浜を目指して歩いてみる。ところどころ深いところもあり、ハマって中のパンツまで濡れてしまった。一度濡れるともう余裕。この日差しだからどうせすぐ乾くだろう。

上陸後、ふと妙な錯覚に襲われる。耳に入る音は同じはずなのに、何も聞こえないのだ。浜から島を撮るのと、島から浜を撮るのとでは随分と印象が異なる。実際は数十mしか離れていないのに、何かこう別世界にいるような感覚になる、不思議だ。


いま来た方向にレンズを向ける。島から浜を撮影。


周りが海に囲まれているだけで、すごく隔離された別世界に来たような気持ちになる。


どこまでも遠浅でのんびりした世界。


遠くにサギが立っている。まるで静止画のよう。

 

浜から戻ったところに、散歩中のおじさんに声をかけられた。竹富島はとても平和な場所だと教えてくれた。そうそう竹富島には警察がないんだった。みんながそれぞれ、「ああ、じいさんいるな」なんて具合に家の前を通ると、無意識的に家を覗いたりして。

そんなことだから何かあればすぐわかるらしい。「こんな海眺めてたら、悪いことしようなんて気持ちになんてならないんじゃないですか」なんて会話を交わすと、「また来てよ」とおじさんは歩き出した。


猫だってこんなになるくらい平和な竹富島。


おじさんは毎日このコンドイ浜を歩いてるらしい。明日は誰に話しかけるんだろうね。

 

ただ沖縄の人は海にはあまり行かないという話もこちらで聞いた。やっぱりそこにあるものが当たり前すぎると、わざわざ行こうなんて思わないのかもしれない。僕らからしたら「もったいないなあ」と思ってしまいがちだけども、きっとそんなもので逆の立場になればそれはお互い様ってことになるんだろう。

孤独を知ってるからこそ、周りの人の存在をありがたく思えるだけで、ジャングルで生まれ誰とも関わらずに育ったとしたら、孤独という気持ちがあることにも気づかない。


喧嘩ができるのは兄弟がいるから、それは幸せなこと。

 

小さくなったおじさんを目で追って、「ということは、僕はやっぱり勝ち組ということになるのかもなあ」なんて思ったりもした。おじさんの足音が近づくとサギがゆっくりと飛び立った。


再び独りになった僕の耳に、低空を飛ぶ聞こえないはずの羽音が聞こえた気がした。

 

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