平家納経を勉強したので写経してみたら全然心が休まらなかった話

このたび初めて写経というものにトライしてみまして、いろいろ思うところがありましたので、ここに留めておこうと思います。

きっかけは平家納経というものを勉強する機会がありまして、書いてみたくなったんですよね。どうして平清盛一門はあんなにも華美な装飾経を制作するに至ったのか?何を思いながら書いたのであろうか?というところへの興味からです。


写経用紙(ゴージャス版)を買いました。1枚3000円超えてくる高級っぷり。だが平家納経意識するからにはこれくらいは。。。!

写経して思ったこと

実際やってみるとまったくイメージが異なりまして、というのも写経をすると心が落ち着く。無心になれる。そんなことをよく聞いていましたけど、実際やってみたら、とんでもないって思いましたよ。

むしろ頭の中がものすごく騒々しいことになってしまった。たくさんのことが頭の中に思い浮かんでくる。とくに印象的なのが懺悔の気持ち。気持ちがすっとなるとかとんでもないこと。個人差はあるんでしょうけど、まったく落ち着かなかった。

ま、そこに行き着くまでにも順番があったわけですので、そこに至った気持ちの変遷を簡単に。


こんな紙もある。黒が映えそう、金字でもいいかもしれないけど。写経用紙ってたくさんあるんですよ。

まず、めっちゃ難しい

最初は写経そのものがむずかしくって、とにかくどうやったらお手本のようにかけるのか?、書き方について頭の中がいっぱいになる。

当たり前だろうけど、小さい筆に慣れてないし、字はきれいに書けないのはもちろんそもそも字がでかすぎて枠に入り切らない。なんて難しいんだ。写経。というようなことになりまして頭の中もやもやもやもや。落ち着かないです。無心は遠い笑

ぜんぜん進まない!

で、そのあとはあまりの進まなさに辟易してくるフェーズにはいます(集中してませんね)、なんせ1行書くのに10分はかかるんですもの。いつ終わるんだこれ!?というようなやらされ感で書いてるからよくないんでしょうけど、それにしても進まないんです。

「まだ2行しか終わってない、これを後1時間以上も続けるのか。。。」みたいになりまして頭の中はやはり騒々しいです。

変なゾーンに入る

ようやくです。その後、筆がのってきて変なゾーンに入った感覚になりました。途中なんか意識が二つに分かれたような感覚になりました(僕は)。1つはお手本の通り書こうという気持ち。これは当然ずーっとあるんですが、それとはもう1つ、いままで行った悪いこととか後悔しているようなことが頭の中に思い浮かんでくるではありませんか。またもや頭の中はいろんな言葉や映像で埋め尽くされていきます。本当に休まらない笑

ただ、これはもしかしたら、自分が平家納経を勉強したからかもしれません。ここで少しだけこうなってしまった背景である写経の歴史、そして平家納経についてを簡単に触れておこうと思います。


なんとか書ききった・・・2枚連続で書いたら4時間かかった。(1枚め1文字失敗したことによる)

写経のはじまり

まずは写経の始まりです。そもそもは国を統治するため、また文化を向上させるためにみんなを同じ方向に向かせるために仏教(宗教)が取り入れられたところから始まります。これは聖徳太子の時代までさかのぼりますね。

で、その仏教を普及のためには寺の建立も盛んに行われまして、そうなるとそれだけの大量の仏典が必要になります。印刷技術の無かった当時は、すべて複写する必要がありますので、写経僧が養成され、そして写経所もたくさんできました。これが写経の始まりです。

装飾経が生まれる

で、時は平安時代まですすみます。遣唐使が廃止されたことで国風文化が生まれるこの時代、貴族社会において絵画・工芸における表現技術が洗練され、また作善(仏縁を結ぶための善事)意識も高まってきます。

どのような些細な作善にも仏の功徳が約束されるという教えのなかで、より善いもの、より美しいものをより多く造ることが「より大きな功徳」につながるという解釈がなされるようになります。尽善尽美という言葉がこれです。権力者たちにとって善美を尽くして造寺・造仏等に取り組むことこそが信仰となりました。

その中でも写経は徳の高い行為とみなされており、経巻を飾り立てるようになったということです。こうしてどんどん華美に装飾されるようになり、装飾された写経は装飾経と呼ばれるようになりました。

平家納経とは

そして装飾経の中でもその極致に位置づけられるのが、平清盛が一門の男女を率いて写経した平家納経です。広島県(安芸)の厳島神社に奉納されています。

各巻には、染紙の裏表を濃彩の絵と金銀箔で豪華に装飾した料紙を仕立て、写経の文字にも墨だけでなく金銀泥や絵具が併用されている。表紙や見返しに華麗な装飾画を描き、料紙のみならず、巻軸や紐にも装飾工芸の粋を尽くしています。本当に豪華!


平家納経(模本)厳王品 田中親美筆 大正時代・20世紀 松永安左エ門氏寄贈
原本=国宝 厳島神社所蔵 平安時代・長寛2年(1164)
1089ブログより

平家納経がこんなにも華美なわけ

保元の乱、平治の乱などの戦に際して勝ち抜くことで公卿の地位を得た清盛は、それだけ屍の山を築いてきたという裏返し。武者の世の到来において、殺生の大罪は、宗教的な教えを超え、生々しい現実となって自らの罪に対する自覚やおそれが彼に襲いかかったのでしょう。

光があるところには必ず影が存在します。その光が強ければ強いほど影も濃くなります。彼の心の内にある血塗られた過去の滅罪が影となりその影と同等の光を求めた結果、これほど華美に装飾された装飾経が生まれたということでしょう。平家納経には清盛やその一門が抱えざるを得なかった暗闇が投影されてもいると考えるわけです。


描いた日はこんな美しい光と影が。

平家納経に触れてみた感想

ということで、こんな背景を勉強してから写経をやってしまったので、今の僕にとっては写経は懺悔部屋みたいな印象すらもってしまってます。自分の罪を見つめ直す行為なような気がしちゃうわけです。

とうぜん写経したからと言って罪が許されるわけはありませんから、せめて過去を振り返り未来に活かすという感じですかね。少しだけ時間を確保して、立ち止まるお手伝いをしてくれるのが写経かもしれません。こんな使い方に写経を使ってみてもいいのではないでしょうかね。

しかしほんともっと練習しなくてはいけませんね、あと集中力を僕にください。

 

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今回使ったお手本。中には写経のあれやこれが分かる本も入ってますし、何よりお手本が超美しい(一色先生は書道会でもかなり大御所なお方)。写経用紙も結構入っているのでおすすめです。

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