映画「縄文号とパクール号の航海」のメッセージ

グレートジャーニーでお馴染の探検家の関野さんとその教え子2人がインドネシアのとある民族の手を借りて、インドネシアから日本までの距離4700kmもの距離を航海した、数年前のことだ。そんな冒険をドキュメンタリーにした映画を見た。

縄文号とパクール号での大航海

縄文号とパクール号という二艘で向かうのだが、舟に動力はなくコンパスも使わない。古代人の感覚そのままに、太陽の位置と島影を頼りに日本(石垣島)を目指す。それだけでも十分に無謀なのだが、加えて文化も言語も異なるインドネシアのマンダール人(舟もこの人達が作った)と船上の共同生活を送らなければならないというもの。自然との戦いと異文化交流を通じての若者の葛藤が描かれていた。


縄文号とパクール号公式HPにある船の説明1 縄文号


縄文号とパクール号公式HPにある船の説明2 パクール号

風がなければ時に、歩くよりも遅い速度でしか進まない縄文号とパクール号は予め作成していた航海計画を初日から大いに狂わせる。台風などの自然災害だって起こる、計画どおりに物事は進まない。結果的に中断を余儀なくされ、複数年で行われることになるのだが、その間に震災が起こったり、同日にクルーが亡くなったりと、それぞれの想いや感情を熟成させる機会をもつことにもなる。


石垣島の海、縄文号とパクール号はここを目指す

こうした偶然とも思えることが必然的に起こり、また自然の思惑とすら感じられ、「この人生、生かされてるんだなあ」なんて思った。

この航海の意味

そんな無謀で、無意味とも捉えられる試みを実行しようとするのは、彼らの酔狂ではなく、まさに現代人へのメッセージなのだろう。

だが明確なメッセージと言っても、関野さんは旅をするだけで、そんな直接的な言葉は残さない、その解釈は我々の中にしかない。私達が関野さんのチャレンジを見てどのような想いを抱くのか、その解釈は受け取り手に委ねられている。

ただ、「ふと、どれほどの意味があるのか?」と、やな自分が頭の中で口を出してくる。

素晴らしいチャレンジだと思う一方で、「ただ一瞬(3年だけど)文明の力に頼らずに、古代人が行っていた移動をやった、この技術の発達した今。それ以上でも以下でもない。」どれだけの意味があるのかと嫌な見方をする自分が、なかなか消えてくれない。


今は飛行機で数ヶ月数年の航海を一瞬にしてしまう時代

元来自然の一部であり共生していた人類はいつの間にか、自分達をヒエラルキーのトップにおき、まさに既存の動植物、地球を侵略して今の暮らしを手に入れたわけで(おかげでいろいろ助かっておりますが)、自分自身、自然を搾取して今の生活をおくる略奪者の一味であるし、関野さんだって旅から日本に戻ってくれば、そうした恩恵を賜る1人であることに違いはない。

言葉を選ばずに言うと、環境破壊に加担し動植物の殺生に目をつむる自分たちが時々思い立ったかのように、いい子ぶることにどれだけの意味があるのかなんて思ってしまったということだ。それはもちろん、この旅の話に限ったことではない。

同じ毎日はこないことをいつ気づくのか

ここで、いい方の自分ももっと頑張って欲しいので、思考の比重をそちら側にシフトする。といいうか悪い方の自分に勝ってくれ。頼む。

「1人で自然と共存しようと山にこもって生活するよりも、間違いなく多くの人に考える機会を提供できるという意味では(僕のように)、今回の旅はやはり素晴らしい取り組みだったんじゃないか」と言いたいそうだ。

目の前のことにだけに目を向け、今に行き着いた連綿とつながる過去を探ろうとしない我々は、ほんとうの意味で未来を見ているとは言えないのではないか。まずは目を向けること、知ろうとすることが重要だ、それがないと何も始まらないんだと思う。

風が吹かなければ舟は動かない。計画通りには進まない。こういうことは実体験からしか本当のところは学べないのではないかと思う。台風が来たら中断するのが当たり前だ、日本に着くよりも命のほうが大切なんだもの。しかしながら現代人は命より会社の方が重いらしい。おかしいことに気が付かない、麻痺している。


日常風のこうした日々は、実は非日常の風景かも

少し立ち止まって考えるだけで、当たり前がどれほど当たり前でないか感じることだろう。同じ毎日はこない、同じような毎日に感じるだけ。だから毎日というのも変な感じがしてきた。異なってるんだから異日だ。日々満ち足りた日にするという意味をこめて満異日とでも書いてみようか。

日々変わる自然の中においては当たり前ほど珍しいものはなく、変わる事が唯一変わらないことなのだ。

0を1にすることはとても難しい、だが1を10にすることはきっとできる。この旅自体の意味は解釈次第だけど、この旅の影響はきっと誰かを動かしたろう。そうした1がたくさん出て、自分たちの人生をスタートさせることができたなら、、、

まだまだどこかで上映するかもしれません、気になる人はググってみてくれよな!

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