「目的思考」で学びが変わる〜千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦〜読んだ感想

「目的思考」で学びが変わる〜千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦〜を読んでみたので感想を少し。久しぶりにこの手の本を読んだ。端的に言うと素晴らしかった。パッと見た感じタイトルだけでは「いつものよくあるやつね」って言う感じなのだけども、サブタイトルに「中学校」ってキーワードが見えたので気になって読んでみた。

簡単に説明すると、公立中学校の教育を改革している工藤さんを取材した話なのだけど、サイボウズの青野さんや映画「みんなの学校」でも知れた木村さんとの教育哲学対話もあったりで面白い。教育の方法とかではなくて、必要性から逆算してアプローチを本質的なものに変革するという感じ。理論ではなく実践例なので良い取り組みを紹介してくれた本だと思う。

それだけに「いつものよくあるやつね」って思われて、手にとってもらえないってことになっていたら悲しいなと読んでていらんおせっかいを考えたりしてます。

さて「目的思考」ってつまり何のためにやるのか?という話だけども、よく聞くから耳にした人も多いと思うけど、これを本当に実践できてる人ってなかなかいないなあと思った。キーワードの意味くらいは答えられてもその意味を現実世界に置き換えて実践するということになるとこれはもう、地動説から天動説に変わる、変えるというエネルギーくらいえらいことな側面がある。

しかもこれを民間の会社ではなく規則ガチガチ、前例踏襲大好きな学校という組織でやろうというのだからやはり大したものだなと思った。今の世の中にはあっていない古臭い規則持ち出され「これなんのための規則?」って不思議に思っても「学校だから仕方ない」と諦める人99%くらいじゃないかなと思うけども、この本によると工藤校長は違う。ちなみに工藤校長は民間出身でなくずっと教員畑、これもすごい。

ただただ行動の基準は「生徒のためになってるのか?」だけ。だから保護者も先生も自分の立場も関係ない。それが生徒のためになるのであれば、すべてを実行していくという気概を持っている。

工藤校長がやってきたことを少し紹介しておくと

・校長の話はPPTでプレゼン形式
・定期テストがなくなって単元テスト&年5回の実力テスト導入
・固定の担任制を廃止して全員担任制導入
・修学旅行を修学する旅行へ、旅行企画プレゼンのための下見旅行へ
・体育祭や文化祭などの行事ごとは枠組みから自分たちで企画へ

だいたい学校というのは「◯◯をみんなで作りましょう〜」的な感じだが、工藤校長の方針としては、「そもそも◯◯って必要なのか?」これを考えられる人を育てるということで、勘違いされやすいというか思考が止まっている人に多い手段と目的を混同するようなことがないように、自分の頭で考えるということを念頭に置いている。そして彼自身それを体現している。会社でやるよりずっと難しいだろうことを学校でしかも公立で実現していってる。

元大空小学校の木村さんとの対談で、とても特徴的なやり取りがあった。

木村「私たちが生徒に大事にしてほしいと伝えるべきことは「心」じゃなくて「行動」なんです。」


工藤「人の心なんて教育できるものではない」

よく小さい頃はみんなを好きになるのがよくて嫌いな人を作るのは悪いこと、だからみんなと仲良くしましょうというやつがあるが、そんなことを言ってる大人は嫌いな人で溢れかえってる。これが工藤さんの「人の心なんて教育できるものではない」ということばである。だからこそ木村さんは嫌いになる心は仕方がない、だからそんな嫌いな気持ちをどう取り扱うかという行動が大事なのだと言っている。

理由もなく嫌いなやつを好きになろうとするなんて心が分裂してしまいそう。そんな事ができたらみんな苦労していないわけで、嫌いだから意地悪するのか、嫌いだけどそれなりに付き合うために対話をするのか、様々な選択肢を頭の中に揃えられるようにしないといけない。こういうと一部の人には「心は大切ではないのか?」と言われてしまいそうだけども決してそうではない。というかそういう問題じゃない。

例えばこれから外国の人たちとも今以上に関わっていくことになる。日本人ならわかることも外国人ならわからないこともたくさんある、わからないが前提でスタートしないといけないわけだから、心を示す行動が更に重要になってくるってこと。そこから理解が進めば心にも入っていける。「心」より「行動」といえば過激だしアレルギー反応出る人もいると思うけど、両方大事だし時に順番も考える必要があるということだと思う。それも目的思考だと言える。面白い対話だった。

ごくごく簡単に書いてみたけど、すごい取り組みがたくさん掲載されてるし、学校で働く他の先生目線の声や実際の生徒のコメントも載っている。学校関係者はもちろんだけども、ビジネスマンの方にもぜひ読んでもらえたらと思う。その中でも民間企業と学校は違うと考えている人こそ読んだほうがいい、それこそ目的思考で考えれば同じ、会社と学校は管轄も年代も違えど、社会で活躍する人材を排出するという責務は同じはずなのだから。読みやすいのですぐ読めます。出張の移動時間にでも是非どうぞ!

「目的思考」で学びが変わる〜千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦〜

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