誰かが外階段を降りている。
猫がないたら犬がないた。
振り向くともう人影は見えない。
猫の鳴き声も犬の鳴き声も、もう聞こえない。
冬が好き、街がそういう雰囲気になるから。
そういうってのは春のような希望とか、夏のような活気とか秋のような充足感とかそういうもので、冬はそういう感じがないのがいい。
色がない季節というのか。鳴き声のあとにくる静寂のようなモノクロの世界。白と黒のコントラストの季節。
集団もまた個人に還る。拡げたものが収束していくような。
冬の匂いがする。深夜の玄関先、自分でも言ったのか思っただけなのかわからないくらいのただいまって感じで。