スペイン巡礼から1年経て、
冷静にもう一度捉えなおす時が来た。
あの旅で得たものは何か?
失ったものは何か?
変わったものは何か?
変わらなかったものは何か?
約800km、1ヶ月歩き続け、
10000回以上シャッターを切った。
14kgのザックを背負い、
アングルを変えてカメラを構えた。
まずは足の皮が剥け、爪が剥がれた。
そして足首、膝が悲鳴を上げ、
腰に背中に違和感を感じるようになった。
でも見るもの全てが新しかった。
だから楽しかった、だから辞めなかった。
でもいつしか新鮮さを感じなくなった、
当たり前になった。
非日常だったものが、あたらしい日常となり、
これまでの日常が非日常に置き換わる感覚。
怖くなった。
大切なことは特別な場所で特別な何かを見つけることではない、
普段の生活で特別な何かを見つけることこそ大切なのだ。
そんなことに気がついてから意図的に、僕は小さな世界に注目した。
見せられる世界ではなく、見ようとする世界に。
上を向いて歩こうもいいけど下を向いて、歩いてもいいのだ。
日々目に飛び込んでくる雄大な自然の下で、
懸命に生きるカタツムリやワームに死んでしまったカエル。
風にゆれる名もなき花、
朝露をまとった道端の葉、
太陽の陽に照らされた綿毛の1つずつ。
小さな世界に無限の大きさ、力強さを感じる出会いが待っている。
世界が拓けた。