■本日の工程
2016年5月10日 巡礼30日目
ペドロソ(7:30)→サンティアゴ・デ・コンポステーラ(14:00) 約20km
カミーノを歩く夢を見て目が覚めた。泥だらけの道をメンバーと歩きながら、写真撮る夢だった。最終日にこんな夢見るなんて、まさに映画みたい。ペドロは見た目ほどじゃないけどもまずまず豪快ないびきだった。
デイビッドやデイジーは既に準備を初めてていて、あとで追いかけるということで先に行ってもらう。よく見ると親指の爪から血が出ていた。お前も最終日に血出してくるなんて映画のようじゃないか。そんなに演出しなくていいのだよ。ま、今日1日は持ってちょうだいな。相変わらずペドロは寝ているのでほっていくことにする。
泊まっていたアルベルゲ
最終日を祝福してくれるような神秘的な朝日に包まれて
雨が降ってなくてよかった、久しぶりの晴れ空。サンティアゴに着く今日はなぜか晴れる気がしていた。気持ちが良い。今日で最後になる巡礼路、見慣れた景色を再度目に焼き付けるように一歩一歩を噛みしめるように歩いてく。朝日はとても神々しく、昨晩の雨に濡れた木々が照らされ、まばゆく輝く姿がなんとも美しい。森の中全体が神秘的な空気で溢れている。
先行く彼らに追いついた。お馴染のデイビッドとデイジーに加えて、デンマークのフレデリカ(フレディ)と一緒に歩く。フレディは僕たちが離れている間に行動を共にするようになっていたらしい、クールビューティだけど、とてもいいやつ。
途中休憩して、サンティアゴケーキを食べる、カフェコンレチェに砂糖を入れる
休憩後ふざけて坂を駆け上がる。約800km1ヶ月かけて歩いてきて今なお走り出せるエネルギー。自分の中の今在る全てのエネルギーを使いきって最後のカミーノを楽しむチカロカ、チコロコ(クレイジーなやつらみたいな意味)。長かった旅も今日で終わる。サンティアゴ・デ・コンポステーラまではあと10キロメートル。
カミーノをはじめて変わったこと、わかったこと
デイビッドと歩く。そうそう、こんな感じだった、歩き始めた頃を思い出す。デイビッドに「カミーノを始める前と今では何か変わったか?」と聞かれた。デイジーに「何のために歩いてるの?」と聞かれたことが懐かしい。その時は「将来のことについて考えるために、自分と向き合うためにここにきた」というニュアンスのことを話したんだった。
一瞬考えて、「変わったよ」と答えた。でも、もちろん黒が白になったとか、◯が△になったとかぜんぜん違うものになるなんてことはない。「将来のことがくっきり見えた」ということも全然言えない。
悩みや不安に対する答えは見つかってないけども、それを考える自分のベースに変化を感じられた。彼には「物事を大きく考えることができるようになった、やろうと思えば何でもできるということがわかった!」そう答えた。
多様性を受け入れる、自分好きなように生きるということが両立するということを体感した。個よりも組織が優先され、我慢や忍耐が美徳とされる日本の旧式の文化の中にいてはきっとわからなかったことだと思う。
続けてデイビッドは「限界はなくお前がやりたいと願えば何でもできる。」と、呟いた。旅を始めた頃、彼が言った「情熱があれば何でもできる」というセリフが頭のなかに浮かんだ。
最後に「それが人生、マイライフだ」と言って微笑んだ。
デイビッドと、デイジーはほんと仲が良い。いつもケラケラ笑ってる。きっとデイビッドがばかなこと言って笑わせてるんだろう。この旅が終わったらデイジー寂しいだろうなあ。
実に立派。ここからサンティアゴ・デ・コンポステーラの街が見える
780km踏破!到着!サンティアゴ・デ・コンポステーラ!!!
いよいよサンティアゴ・デ・コンポステーラの街に入った。みんな無意識のうちに足早になり街を歩く。街に入ってからカテドラルまでも少し距離がある。じょじょにスピードが上がる、カテドラルの頭が少しずつ見えてくる。
旧市街に入る。既に到着している巡礼者たちと挨拶、見た顔もはじめて人もいるけど、関係なくみんな仲間と言わんばかりに、手をあげ声をかけてくれる。
大きな広場(オブラドイロ広場)が目の前に広がる。僕たちの他にもたくさんの巡礼者たちがいる、握手したり、ハグしたり、一人で喜びを噛み締め思いを馳せる人等、その姿は様々だけどみんなものすごくいい顔をしている。
そして、サンティアゴ・デ・コンポステーラのカテドラル!!大きい!修復中だたけど、すごいもう感慨深い。。。
デイビッド、デイジー、フレディ、到着したときみんな泣いてた。カテドラルを見つめ、空を仰ぎ、抱きしめあう。「このメンバーでよかったね」「アイラブユー」と。その後はもう言葉はいらない。
カテドラルの眼の前で寝転がる。青空が広がってる、晴れることが少ないこの地域で晴れているということ、ヤコブの祝福だということで受け取っておきます。雲から顔を出した太陽が目にしみる。涙が出そうになった。最高のビール、エストーリャガリシアで乾杯。懐かしのメンバーとも再会した。
広場で会うペレグリーノ(巡礼者)は、たとえ知らなくても仲間のような気分になる。どちらともなく微笑みかけて手を振る。それが知った顔であれば、抱き合って感動を分かち合う。ただただ助け合い励ましあって同じ経験をしてきたメンバーを称え合う。
100%の純度の喜びと慶び。自分たちの頑張ったブーツに感謝し、一緒に記念撮影。ここにいるメンバーはみんな、それぞれの国から一人で来て、そしてこの旅で知り合った仲間ばかり。本当に奇跡の出逢い。これで離れてしまうのが信じられない。今までに感じたことのない不思議な気持ちに満たされて、言葉にならず、でも体の中の喜びをそのままに、一緒にいてくれるメンバーに1%も余すこと無くこの気持ちを共有したい。
もともとこのスペイン巡礼に出かける前に、この度は何かを得るための巡礼ではなく、持っているものを捨てていく旅という風に聞いていた。はたしてどうだったろう?捨てるものはたくさんあった。これまでの日本の中で普通としていた既成概念だったり、自分の可能性にしていた蓋だったり、見栄だったり、しょうもない拘りだったり、必要のない気遣いだったり。
でも同じくらい得ることも多かったと思う。最高のチームメンバーはもちろん、何もわからずとも飛び込んでみるとなんとかなるという自信に、人間の根源的な優しさ。こちらが心を開けば相手もまた心をひらいてくれる、損得を考えない人間的な付き合い方。それになにより自分の好きな写真を撮ったり、誰かにこうした喜びや楽しみを伝えたいという気持ちに改めて気づけた。表現者として生きていきたいなあと思った。
考え方も感じ方も思いっきりシンプルでいい。やってたことは最高の仲間と歩いて食って、酒飲んだらあとはクソして寝ただけ。本当に笑いあり涙あり、歴史あり自然あり、食あり酒あり、出会いあり別れあり、まさに人生の縮図の30日間だった。自分にとって、最高の旅となったことは言うまでも無いけれど、やっぱり敢えていいたい。この旅は最高だーーーーーーーー!!!
1ヶ月供にしたザックとブーツ、やったね!そして、みんなお疲れ様
【スペイン巡礼30日目 番外編】巡礼証明書ゲット!飲んで踊って大お疲れ会開催!に続きます。
※この記事はその日書いたものをベースに、後日加筆修正を加えたものです。
【スペイン巡礼780km|自分探し旅行記まとめ】
2016年4月11日〜5月10に敢行したスペイン巡礼780kmにわたる自分探し・世界遺産・三大聖地を巡る旅として30日間ひとりぼっちで旅に出てきました。ここではその旅のまとめ、僕自身の備忘録として、スペイン巡礼に関するあれこれ(準備、持ち物、費用、ルート、日数、言語等々)をまとめています。