僕が撮っている写真は借り物だった。
今たしかに目の前に存在する世界からの借り物。
芸術を考えた時、僕は自分自身の中から湧き出るものを表現するような
言わば0から生み出す工程が必要だと思っていた。
目の前にある風景の力を借りることは、
なんとなく自分の中で違うのではないかと思う気持ちを持っていた。
確かに独自の視点で切り取っているし、その場でその視点でそのタイミングで
シャッターを切っているのであるからオリジナリティはあるのだと思う。
そういう意味ではこの世に1つの作品である。
でも創作をした印象は持てなかった。
なんとなくやっぱり借り物の延長のような気がしていた。
ただ、最近は少し違う印象を抱くようになってきた。
写真の組み合わせによる意味合いや印象の変化に気づいたり今まであった
風景の中に異物を放り込むような試みを行ったことで自分だけの枠を越えて、
様々なものを融合させられる可能性に面白みを感じるようになってきた。
もしかしたら写真への面白みではなく、その試みにより確立されている
既知の世界が少しばかり揺らぐことに興味を持ったのかもしれない。
不安定な世界を見るために僕はもがこうと思う。