ニューなんとかみたいなお店の名前の頭にニューがつく意味を考える

戦後の大衆文化から、第2次世界大戦後の日本社会を考察するという機会(大学の授業の一環)がございまして、戦後かたちづくられてきた人とモノとの関係を考える的な試み。大衆文化って言っても広いのでね、テーマ決めるの大変でしたけど、前々からひっかかっていた「ニュー」をテーマに考えを巡らせました。お店に「ニュー」ついてると大衆の味方的な感じありません?

みんな一度は考えたことあるんではないですか「ニュー」ってなんぞやと。今回は一定層には需要あるんじゃないかと。おにぎりより。そんなことないかなー今回は「当時の時代性」や「外国語の浸透」、「ビジネス観」みたいなところからアプローチしてます。ちなみにレポートリライトしたやつなので無駄に長いです。時間あったらぜひご覧ください。(時間ないけどちょっと気になるぞな方は、最後にまとめてますのでそちらどうぞ)

今回の舞台浅草から見るスカイツリー

浅草で「ニュー」をテーマに据えてみる

おにぎりブログに続いて、またも浅草。やはり下町だからってのがあるんだけど、浅草はけっこうカオスだと思う。観光地化される街には、その過程で地元民が立ち退いてしまうこともけっこうある。でも浅草って街は食事をしていても観光客の隣に地元のご夫婦が座っていたりする。海外の言語が飛び交いながら、下町っぽい言葉が聞こえてくる。グローバルとローカル。新旧の文化が調和した印象。

そんな中で、ふと目に止まったのが「ニュー●●」という店。これは浅草に限ったことではないが、大抵「ニュー」がつく店は古い。新しいという意味のはずの「ニュー」がつくことで逆に時代性を感じさせ「当時はきっと新しかったのだろう」と体験していない当時の風景に想いを馳せてしまう。そんな効果が「ニュー」にはあるなあ。

しかしどうしてこんなにも「ニュー」がつくお店が多いのであろうか。お店を始める際は新しいのが当たり前なのに、どうしてわざわざ新しいという意味合いの「ニュー」を頭につけるのか。謎。店名における「ニュー」の意味合いの不思議さ。答えあるんかなこれ。

新旧の文化が調和した印象の浅草

ニュー●●●●という店名

「ニュー」がつく店をたまに見かける。そして大抵「ニュー」がつく店舗は新しさよりも、逆に古さを感じさせる。言葉とその佇まいに矛盾があるようで個人的には満足度が高いわけです。「ニュー浅草」「ニュー栃木屋の」2店舗だけ掘り下げた情報いれてます。そのほか浅草でいくつか写真も撮りましたけど、今やっているのかどうなのかわからないところ、今は閉まってるところもあったりで写真だけ撮ってます。

ニュー浅草(1959年創業)

1959年に創業した浅草駅からすぐの昼飲み(11時半オープン)ができる老舗居酒屋。1階がカウンター、2階はテーブル、3階は座敷と用途によって使い分けができ、かつリーズナブルな価格設定であったため地元民やサラリーマンや観光客に人気あり。畔上商事株式会社が運営しており、浅草を本店として都内に複数チェーン展開、でも現在は閉店している店舗も多い。(行ったことある人もわりといるのでは?)ちなみに当時の居酒屋はそのほとんどが個人経営で、1950年代後半からアメリカのフランチャイズ方式を導入し始める流れが起こりチェーン店化する居酒屋が増えたよもよう。年代を考えるとニュー浅草もその流れにのったはしりの企業だとも言えそうかも。

ニュー浅草外観

看板のフォントに下町の印象を持つ。また赤提灯という大衆居酒屋の代名詞でもあるシンボルを活用してることにも飲み屋巡りが好きな身としては好感を持つ。かなりの人気店。1回飲みに入ったことがあるけども、まあ普通っちゃ普通だけど、それがいい。そこはかとなく漂ういい飲み屋な空気感、雰囲気ある。現在はコロナウイルスの影響あるのでね、また飲みにいけたらいいなあああああ。

ニュー栃木屋(1960年代前半創業 推定)

大浴場、サウナを完備したビジネスホテル。アクセスが良く、価格面をおさえていたことでリーズナブルな宿泊施設としてビジネスマンを中心に人気あった。宿泊情報サイトでも平均点以上の高評価(楽天トラベル 5点満点中4.18 /トリップアドバイザー5点満点中3.5   2021年5月時点)であった。正確な創業年の記載が調べきれなかった(現在閉店しており、HPが存在しない)けど、フェイスブックの企業ページには、2015年段階で50年以上前に創業と記載されている、てことは1960年前半かな?と。現在は休館中であり、再開のめどは立っておらずビルも取り壊されるみたい。

ニュー栃木屋外観

こちらも看板のフォントよね。時代を感じさせる。看板下の軒にもホテル名が書かれているけど、看板とフォントが異なってる、このこだわりのない感じが設定している大衆料金を裏付けるような効果があるんではないか。看板に直接「大衆料金」と記載しているところが潔くて良い。

「ニュー」の成り立ちについて考察

「ニュー」とは一体なんであろうよ。「ニュー栃木屋」「ニュー浅草」の2つではまあ不足してるやろうけども、ひとまずはこの2箇所で「ニュー」にはどのような意味があるのか、それぞれの現在の状況と過去の歴史、創業時の時代背景なんかを調べてみる。

時代背景について

撮影した2店舗ともに創業年は1960年前後、いわゆる高度経済成長の時代。当時は東京オリンピックの開催、高速道路、東海道新幹線の開通などで日本人の生活が大きく変わった。何よりも経済発展が優先され、この流れでサラリーマン人口が就業者の半数を占めだす。流行語になった「もはや戦後ではない」の通り、戦後間もないとは思えないほどに国に勢いが見られて、東京オリンピックなどの国際的なプロジェクト、経済成長によるビジネスの拡大と所得の増加からホテル需要や外食需要も大きく伸びていく。

一方で戦後の日本は復興が進む中で教育や住環境、食事などいたるところに欧米文化が入り込み、生活様式そのものも大きく変化する。その影響もあり外国語(カタカナ語)も急激に増える。

ニュー王将外観

外国語(カタカナ語)について

そもそも外国語は明治維新以降に本格的に使われ始める。文明開化時には各国の文化や技術に紐づく形で大量の言葉が輸入されたが、翻訳作業が追いつかんかったことで、翻訳や当て字なしのカタカナ語で広まる。このほかにも当時カタカナ語が浸透した理由は2つあって。

1つ目は一般的に外国語を自国に取り入れる際は、翻訳してからフィットする言葉を当てる、が、しっくりくる言葉がなかったらカタカナ語でいきましょう!となる。2つ目は大量の漢字になる場合、書く作業が大変になるからカタカナ語でいきましょう!となる。我々がカタカナ表記を見るだけで、外国から来たんだなっていうのを感じるのはこうした流れからくるんでしょうね。

ニュー花門外観

ホテルニューオータニの「ニュー」について

ちなみに、この店名における「ニュー」の意味を調べるにあたっては、ホテルニューオータニは実は一番に思い浮かんだ。ニューオータニも実は同時期の1964年に開業している。言わずと知れた日本の代表的なホテル。HPにこんなことが。以下は抜粋。

ホテルニューオータニの「ニュー(NEW)」には、常にホテルが新しくありたいという創業者の想いから名づけられており、何年経ってもお客さまを新鮮な気持ちでお迎えする、常に新しいことにチャレンジしていく、という意味があります。私たちはこの「ニュー」の遺伝子を開業以来、諸先輩方から引き継いでまいりました。(HPより抜粋)

ホテルニューオータニ 人事からのメッセージ

「ニュー」の遺伝子。オータニの遺伝子ではなく、「ニュー」の遺伝子。そういうことですよ、遺伝子が宿る余地があるものが「ニュー」ですよ。ちなみにニューオータニは浅草にはなかったで写真はなし。

ニュー菜外観

結局「ニュー」とは

ということで「ニュー」について考えました。寄り道もしたけど考えました。調べた情報からは「ニュー」は単純に「新しい」という意味で使われてはいないかも。そもそもですけど、創業=新しい、ということであり、わざわざ「ニュー」をつける必要はないことです。店名やサービス名などに「ニュー」が使われるのは、だいたいバージョンアップや建て替えといった(リニューアル)という意味合いが多い。と思う。

であれば創業時における「ニュー」は言葉の意味よりも、もしかしたら頭に「外国語を取り入れる」ことを目的にしていたんではないかしら?と思うわけです。頭に外国語を冠することで、グローバル化していく時代の流れに乗ることができるぞ!と。その際に「ニュー」という単語が選ばれた、「これから新しい時代を作っていくぞ!」というような気持ちや期待感を表現する上で「ニュー」がフィットしたのかもしれんなと。

違う観点では、企業経営は半永久的に存続させることを目標に行われるべきものだし、優良企業は必ず信頼を培ってきたって歴史ある。だからまあその歴史こそがブランドとも言えるわけで。その視点に立ってみれば、現在において「ニュー」を冠して事業を行っている企業は、名前を聞くだけで古さ(歴史)を認識させる効果がある、老舗感を匂わせることができる。(実際そんな軽い気持ちで「浅草きたら一回はニュー浅草で飲みてえな」などと思ってる時があった。)

ニュー英(はなぶさ)外観

ということで当時は先進性を、そして時がたった今は老舗感を伝えられる言葉が「ニュー」なのではないかしら。こうした短期から長期に渡って効能を発揮するネーミングを狙ってつけていたならば当時の商人魂は恐ろしいなと思いますよ。「ニュー」を通してそんなことを思ったりするのでした。勝手にやってたけど結構面白かったな。あたらしい「ニュー」情報入ったら追記するです。

※参考にしたWEB 情報はすべて2021年5月10日時点のURLです。

楽天トラベル ホテルニュー栃木屋

トリップアドバイザー ホテルニュー栃木屋

日本語における外来語の増加と原因の分析 

戦後の苦しい時代とアメリカ文化の流入

日本のホテル産業史論

高度経済成長と飲食店の移り変わり

Wikipedia 1960年代の日本

ホテルニューオータニ 人事からのメッセージ

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