福島視察〜震災後の現状、復旧と復興〜

約1ヶ月前の6月14、15日、福島エクスカーション(視察会)に参加してきました。
2011年に震災が起こってから、初めて福島の地を踏みました。
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・いわき駅

■福島の課題にアプローチする福島学構築プロジェクト
これは福島学構築プロジェクトという福島の現状と課題を研究テーマとして取り扱い、また復興に向けて動くためのデータを収集して長期的に福島と関わりを持っていくために産学連携しながら進めているプロジェクトであり、福島大学(うつくしまふくしま未来支援センター地域復興支援部門)の開沼博研究室が中心となり進められています。

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・開沼先生

当日は、いわき市から広野・楢葉・富岡の各町を語り部である福島で生まれ育った学生から、震災前の福島や震災当時の状況を聞きながら巡っていきます。

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・バスで巡っていく中で語り部が解説してくれます

この場所にはかつて何が合ったのか、ここで何が起こったのか、メディアではわからないリアルな状況を知ることができます。ここに参加した僕は、改めて知った福島と、これまで知っていた福島とのGAPに内心とても驚きました。

先に断っておくと、「福島」と一言でまとめてしまっていますが、地域によって感じている課題、世代によって感じている課題は異なります。つまり福島の課題というのは存在せず、いろいろな課題が集まってそれが複雑に絡まっていわゆる「福島」の課題となっているわけです。
ただ、今回はそれぞれの課題に対して、個別にアプローチするワケではないので、「福島」として課題をくくってしまうことにします。

■課題先進国としての福島
ちなみに、こうしたプロジェクトを進めていくにあたり、福島を取り上げているのは、必ずしも被災地という側面だけではありません。もちろん被災したからこそ起こったことなのですが、そこから派生して様々な問題を抱える地域となっています。いわば、課題先進国として、課題の多さ、複雑さ、これに関して言えば日本一ではないでしょうか。

この課題先進国としての福島の課題を解決することにつながれば、水平展開して他の地域、他の国にも応用ができるのではないか。つまりモデルケースとして活用してもらうことで、現地の課題の解決に加えて、例えば企業であれば利益につながるそんなwinwinの関係性を長期的に作っていくことができればベスト、そんな考えだったように記憶しています。

確かに、震災当時は多くのボランティアがかけつけました、しかし今は随分とその人数も減り、公的資金に関しても徐々に少なくなってきているそうです、そんな状況では長期にわたった計画は立てることが難しいでしょう。ですので、関わる側も無償ではなく、きっちりビジネスとして、ある種利用するという立ち位置で関わっていくことが必要ではないかと思います。

■改めて知った福島と、知っていた福島
前置きが長くなっていますが、ここで「改めて知った福島と、これまで知っていた福島とのGAP」ということを冒頭でお話しましたが、それがどういうことか、少し触れておこうと思います。

まず僕が当初イメージしていた福島の問題(一次問題)は、

・原発問題
・インフラ問題
・避難生活者問題

こうした言わば直接的なものだったのですが、実際にはそこから少し発展しており、間接的な目に見えない問題(二次問題)とでもいいましょうか、少々一次問題とは形を変えてきているのではないかと思いました。具体的にはこんな感じです。

・汚染廃棄物の処理
・過疎化
・少子高齢化
・コミュニティ・自治体制の機能
・産業の衰退
・雇用問題

まず聞いただけじゃわからない、行かないとわからないことがたくさんあるということです。実際にお話をきかせていただいた所をご紹介させていただきます、私が行って初めて感じたことを少しでもお伝えできればと思います。

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・今回の参加者は15名ほどでした

■広野町:新妻農園
広野町という土地で有機農園を営んでいる新妻さんにお話を伺いしました。
いわゆる風評被害(福島産=危険という思い込みや刷り込み)でお得意さんも3割くらいになったそうです。そんな状況もあり、卸業者につけ込まれて買い叩かれたりすることに。ピーク時の半値だったこともあるとか。

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・お話しされる新妻さん

消費者の理解獲得、販路の確保を独自で見つけていかないととてもじゃないが、やっていけず離農する人も増えたとか、こうして産業の衰退につながっていくことを危惧しているということでした。

実はセシウムなんかも整備した田んぼ、畑で作るとほとんどでない。米も玄米から精米して白米にすると限りなくゼロになる。言わばホコリのようなものらしいです。線量出るとそもそも市場に出ないということで、市場にでているものは基本的には安全らしいです。

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・参加者からの疑問にもお答えいただきます

ただ、不祥事ばかりの世の中の流れ、発言力のある有識者がいろんなことを言うなど、基本的に消費者は何を信じていいのかわからなくなってしまっており、「触らぬ神に祟りなし」という感じなのでしょうね。

■楢葉町:Jヴィレッジ
もともとはサッカーのピッチがたくさんあった住民憩いの場でしたが、現在は復興対策本部として、復興の中心的な場所になっています。ここでは復興本部の副所長からお話を伺います。

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・復興本部から見える景色 火力発電所など

少年の憧れだった一面緑のピッチは、作業員などの駐車場とすべくコンクリートで固められ、ここが本当にピッチだったのか、初めて来る人にはわからないでしょう。入り口から遠い、草が伸び放題の荒れたピッチから、かろうじてピッチだったことが窺い知れます。

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・景色を見ながら解説を聞きます

ここでは東京電力の社員さんのお話を聞くことができました。いろんなメディアに叩かれ、とても居心地の悪い思いをされたであろう社員さんは原発に絡むこともあれば、全く関係のない地域の問題(例えば雪かき)などにも、今も取り組んでいるということです。

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・東電社員の様々な取り組みについてお話を伺います

 

組織的に問題が合ったことは誰が見ても明らかですが、末端の社員にまで、その責を問うのは行き過ぎな気がします。そんな彼らが地域のために今も働いていることは、もちろん知りませんでした。そん地道で地味なことメディアは取り上げないですからね。

メディアの質は国民の質ということを聞いたことがありますが、まさにその通り、我々はこの教訓、改めて知ったことを通して、メディアを育てられる国民性を身につけないといけないとも思いました。

 

 

■富岡町:富岡駅
旧警戒区域、津波による被害の最前線の富岡駅。ここでは被災した当時のままの状態を目にすることができました。海を見通せるようになってしまった駅(津波前は建物があり見えなかったそう)、窓ガラスが破られたり、家の柱がごっそり持っていかれ半壊してしまった家、反対向けに転がってしまったままの車。。。

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・海が見渡せるようになった富岡駅

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・傾いた鉄柱と慰霊碑

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・傾いたパーキングの看板

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・窓ガラスを破られた中華料理店

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・津波の通り道だった角が削られた建物

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・荒れたままの部屋

 

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・流された車

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・ひっくりかえった車

そのひっくりかえった車からはいろいろな植物が芽吹いていました。

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・タイヤの裏で芽吹く植物

この光景を見て、それだけの月日が経ったんだということ、それくらいに月日は流れているのに何も手つかずになってしまっているということ、いろいろなことが頭に思い浮かんできます。この鮮やかな緑から、とても残酷な印象を感じました。

■さいごに
今回の視察のコースは基本的に我々以外誰もおらず、バスでの移動中にすれ違った車はみんな作業関係者ばかりでした。町でありながら町でない、アニメで見たような誰もいない町がそのままそこにはありました。

町というのはやっぱり人がいてこそなんだと改めて感じます。建物だけが建っていてもそこは町とは言えないんだと感覚的に知ることができました。

このエクスカーションの中で、耳に残っている言葉があります。

「復旧はしているけど、復興はしていない」

感覚的になんとなくイメージはできたのですが、調べてみると、

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復旧:
壊れたり、傷んだりしたものを、もとの状態にすること。また、もとの状態にもどること。

復興:
いったん衰えたものが、再びもとの盛んな状態に返ること。また、盛んにすること。
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確かにという感じで、形としては元に戻ってきているのですが、以前のような活気や空気がなかったりとまだまだ本当の意味で元の福島に戻るのは時間がかかるのかもしれませんし、戻ることはもうないのかもしれません。

戻すのではなく、創る。この現状を受け止められる人たちで新たな「福島」を創っていくことが求められているのかもしれないなと、実際そうした動きも起こっています。

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・復興への有志が集まる飲食店街 夜明け市場

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・夜明け市場の前にいた猫さん

私たちはどんな関わり方をすべきなのでしょうか。実際行っても答えは見えないままですが、まずは知ること、そして自分の判断基準、行動基準を1人ずつが持つべきなのかなと。その中でうまく折り合っていく、価値観をすり合わせていくことが求められるような気がします。

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