蝶の羽ばたきのような小さな変化一つで、
大きなものに影響を与えるカオス理論をバタフライ・エフェクトという。
数日前いつもの朝より10分遅く起きた日、
急いで支度をして僕は家を出た。
遅刻ギリギリ。
帳尻を合わせるために早歩きで駅に向かう。
いつもの経路、
今日はゴミを出さないから家を出て左手に歩く。
小さな公園を右手にずいずいと進み、
公園を過ぎると今度はセブンイレブンを左手に交差点を過ぎる。
保育園の角を右に曲がったところで、
頭にすごい衝撃を感じる。
何が起こったかはわからない、
あたりを見渡す。
緑色のゴムボールが跳ねている。
頭のなかで保育園とゴムボールが結びつく。
野球かなんかをしてて、ゴムボールが場外ホームラン、
運悪く歩いていた僕に直撃する。
とりあえず、ゴムボールを保育園に投げ返して、
駅に急ぐ。
まだじんじんとする頭の衝撃を確かめながら、
考える。
言うまでもなく、
めちゃくちゃ確率が低い出来事。
当たるか当たらないかでいうと、
限りなく当たらない確率には違いない。
でも当たった。
きっと宝くじだってそうだろう、
昨日でも明日でも1時間後でも5分前でもなく
そのときに買ったものが当たる。
もう、きっと当たる運命なのだ、
運命との約束なのだ。
ホームランを打つと先生の技術が格段にアップするとか、
少年の体質が変わるとかそんなことはありえない。
でも謎の野球選手がホームランを打ったら
手術が成功するのだ。
木の生命と風のご機嫌が寿命に関係することはない。
でも病室の窓から見える木の最後の葉っぱが散ったら
死んでしまうのだ。
何かは何かに関係しているのだ。
それも、わりと関係しているのだ。
僕がいつもより遅く起きたことによって、
世界の何かが変わった。
今日もどこかでバタフライ・エフェクトが起こっている。
ま、ゴムボールで良かったですよ。
でも思ったよりゴムボールって痛いんですねえ。