香りというものがあります、
気配とも言えるかもしれません。
いなくていもいるような、
なくてもあるようなそんなものです。
そういうものはだいたい、その場所に在るというより
自分の中に在ります。
つまり平たく言えば、思い込みなのです。
そんなことをふと思います。
人間がその他の生物と違うのは空想力でしょう。
ありもしないものを信じることが出来るし、
虚構の世界を成り立たせることも出来ます。
想像上のものを信じきることができるだけでなく、
手放すことさえできない絶対的な力です。
幸運とも不幸ともとれるこの力のおかげで笑っては泣き、
一喜一憂しながら、どうにかこの世の中の秩序の一部として
組み込まれていくことを引き受けることと引き換えに生かされています。
虚であり実である現代の秩序と言われる社会の枠の中に在る私は
果たして生物といえるのでしょうか。