こんにちはいむりんです。ここ最近2箇所で野生動物(有害鳥獣)の対策やその資源を活用する(食べる)ためのワークショップに千葉と埼玉に行ってきました!
僕は数年前から狩猟に興味を持ち始めました。狩りをすることよりも食べることへの興味(現在の大量生産への疑問)からなのですが、ジビエを食べるためには動物と勝負(狩猟)しなければなりません。
またデジタル社会でPCに向かって1日が過ぎていく現在、生きるということを再確認する意味でも狩猟への興味が増していきました。
今回は、素人目線からではありますが、備忘録を兼ねて現在の鳥獣被害の深刻さ、そしてジビエの美味しさ、そして自宅でも美味しく食べるポイントを纏めておきたいと思います。
今回お話を聞いたのは、次の2つの団体です。
・ジビエ料理の普及拡大によって鳥獣被害を減らし、社会貢献の実現することを旗印に設立された日本ジビエ振興協議会の藤木先生(フランス料理シェフ)
・獣との共生を考えるを理念に設立された株式会プロット猟師工房さん
鋸南町のジビエワークショップの風景。こういう機会がもっと増えて誤解がなくなっていけば良いと思います
増え続ける野生鳥獣被害と対策の現状
有害鳥獣対策をしなければならない理由ですが、やはり農村へのダメージが大きいからです。そしてその元になっている生態系の崩れです。よく鹿の天敵だった狼が絶滅してしまった結果、鹿天国となってしまったという話は聞いたことがあると思います。
鹿やイノシシが増えすぎ、山に餌がなくなるような生態系になってしまっていることから、里に降りてきて。人間の食べ物を食べるしかないということです。
「急増した野生鳥獣による年間被害額は200億円以上とされ、申告されていないものを含めれば1,000億円をも超えるとされています。(猟師工房HPより)」
人間の都合で、種を絶滅させたり、山林を伐採したり、その結果増えたものや、山に降りてきたものをは殺せと言ったり、人間というのはほんとめちゃくちゃですね。
野生の動物を相手にしていて、いまは国も動き出し、狩猟期以外は報奨金(自治体によって取り決めは異なります)が出るようです。(ただし国が調理や流通に絡む制度を作ったのはほんの3年前くらいということで、まだまだ浸透されていないということ)
当然ですが、有害鳥獣対策は絶滅させてしまおうとするわけではなく、野生動物の数を適正頭数に戻すという動きです。猪や鹿は年間80万頭捕獲しなければ適正な数(現在の半数程度)には戻らないと言われていますが、現在捕獲できているのはせいぜい56〜57万頭程度、まだまだ追いついていないのが実態なのだとか。
(それに狩猟人口もどんどん減っていますし)
日本ジビエ振興協議会の藤木先生にいろいろ教えていただきました
捕獲した野生鳥獣の活用の実態
そして、残念なのが捕獲した野生鳥獣の9割以上が焼却や埋設等のなどの廃棄処分となっており、資源が活用されていないという実態。
本当は肉・骨・皮など余すこと無く有効活用していきたいですものね。一番僕たちとの距離が近い活用の仕方としては「食べる」ということですが、例えば、現在日本で狩猟や捕獲された猪鹿等の食肉活用されている割合は全国平均で5%なのだとか。
つまり、殆どが無駄に廃棄されてしまっているわけですが、これも捨てたくて捨てているわけではなく、処理や流通の問題が絡んでくることから現状ではどうしようもないらしいです。
また、今の猟師の担い手は高齢化、例えば山で捕獲した100kgの猪を担いで持って返ってくるなんて現実的ではなく、やむなくということもあるそうです。(中には報奨金目当てに狩猟後、写真と尻尾だけ持って帰ってきて、放置するというモラルのない動きもあるらしい)
そして、食肉処理施設を通じて処理されたものしか飲食店やスーパーでは出せないので、その土地でたくさん獲れるにも関わらず、施設が整備されていない等の理由で、別の場所の肉を持ってくるのだとか。
レストランなどで出されるジビエ料理の殆どは海外からの輸入だということで、はやいところ日本でも有効活用してもらえるように狩猟後に処理できるインフラを整備してもらいたいですね。
ジビエ肉は臭い?癖がある?
ジビエは臭い、癖がある、食べても大丈夫?という先入観あると思いますし、実際に体験したり話を聞くまでは僕もそう思ってましたが、実際は全く違和感ありません。牛や豚のほうが臭いあるのではと思うほどです。
先程も触れましたが、例えばきちんと血抜きされていない肉や、処理中に糞尿や体毛が付着してしまったといった適性に処理されていない肉を食べようとすると、やはり肉が傷んでいたり、臭いがまわっていたり、菌がついていたりで美味しいどころか病気になったりもしてしまいます。(毛や爪には菌がある動物もいるのだとか)
ただ、きちんと処理されているジビエに関しては、野生の動物でも驚くほど臭みがなく食べやすいです。まあ、スーパーで買った肉も放置していると臭くなりますから、扱い方ということですよね。
当然、牛と豚に味の違いがあるように、猪と鹿も味が違います。だから豚と猪も違うだけで、野生動物だからではなく、種特有の味がするということですね。(後は処理の仕方ですね!)
ジビエは食べ慣れてないだけで、フラットに味わうととても美味しいですし、体にもいいんです。(シカ肉なんかは高たんぱく低カロリー鉄分も多く含んでいて、とても体にいいらしいです!)ワインとの相性も最高だし!
野生動物の地域・季節による個体差
また、同じ猪、鹿でも地域によって味が違うのが面白いです。理由は食べているものが違うからだそうで、農家さんからしたら激怒ものですが、例えば鹿児島のさつま芋で育った猪は甘くて絶品、たいそう美味しい肉らしいです。そして和歌山の猪はまた違い、みかんなどの柑橘類を食べて育っていて、これもまた異なる味で絶品なのだとか。食べ比べてみたいですね。
逆に住宅地とかで捕獲されるような猪は残飯をあさっていたりするので、これは美味しくないみたい。人間もそうですが、自分が食べるもので体は出来上がっていくことがわかります。野生動物ほど顕著に味の違いがわかるので、このあたりもジビエの楽しみ方の1つだと思いました。
また季節も関係あります、猪は冬、油がたんまりのっかている赤みと脂分が半々くらいなのが最高なのだとか。鹿は逆に夏。狩猟期は冬で一般的なのですが、やはり枯れたものを食べて食いつないでいるので、淡白なんですが、夏は青々とした新芽を食べているので、すこし脂ものるのだとか。季節によっても味が違うんですね。あと発情期中のオス猪は食えたもんじゃないらしいです。
初めて食べる時に、こうした肉にあたってしまうと、ジビエ=臭いとなってしまうんでしょうね。
ワークショップで準備されていた食材、今回は和歌山の猪、長野の鹿でした。両方とってもおいしかった!
美味しいジビエ(野生動物)たち
ジビエは鹿や猪だけではありません。ほかにもいろんな野生動物がいます、それぞれの動物がまた異なる味でそれぞれ美味しいそうです。狩猟にチャレンジしたくなります。
食べてみたいジビエ①アナグマ
アナグマは最高に美味しいのだとか。見かけたら迷わず食ってくれと今回の藤木シェフが一押ししていた。脂の味が最高らしい。こんな記事もあったので、参考にしてもらいたい。
食べてみたいジビエ②ムクドリ・ヒヨドリ
ムクドリやヒヨドリも山で獲れるものは最高にうまいらしいです。りんごとかみかんとか食ってるから最高ですが、街中のはうーんと言った感じ。
食べてみたいジビエ③ハクビシン
ハクビシンもうまい。可愛いがうまいらしい。脂がうまいらしく、骨をしゃぶるように食べるのがうまい。この頃には先生は「美味い」「絶品」しか言わなくなっていた。
食べてみたいジビエ④鴨
言わずと知れた鴨。これはじつは鴨だから美味いわけではなく、やはり何を食っているかが重要なのだとか。その中でも「米を食っている鴨は最高だ」らしい。こいつらは脂分が白くなってるのがわかる。一方、それ以外の穀物や草を食ってるやつは脂が黄色やすぐ変色するので、米鴨には劣るとのこと。鴨の脂色をチェックしてみよう!
超デカイ野生の猪(美味しいのだろうけど、本当に注意が必要!)
美味しいジビエの調理方法
ジビエは1に血抜き、2に血抜き、何よりも血抜きらしいです。どんな調理、味付けしようとも、もともとの肉にダメージがあれば絶対に美味しくならないということです。
ジビエには種類によって、菌やウイルスを持っているものもいるので、基本的には熱処理は欠かせない。ただし、野生動物ということで、筋肉質なので、熱処理をしすぎるとすぐに固くなってしまう。適正温度が大事、硬すぎても良くないし、生も良くない。
ジビエをおいしく調理するコツ①ヨーグルト
例えば唐揚げのようなどうしても高温になってしまうものは、無糖ヨーグルトに肉を漬け込んでおくと硬くならないようで、ちょっとした一手間をかけておくと美味しくいただけるみたいです。
ジビエをおいしく調理するコツ②アロゼ&ルポゼ
また、アロゼというフランス料理の調理法をお聞きしました。これはフライパンが温かくなるまえ(薄くバターが溶ける程度)に肉いれ、フライパンの温度と溶かしたバターを上から繰り返しかけることで、両面からじっくり加熱していく方法です。お肉をひっくり返しつつ、約8分程度(100g程度の肉)バターを焦がさないように続けるとよいのだとか。
そしてその後は焼いた時間と同じ8分、肉を休ませる。予熱で火を通していく、ルポゼを行った肉は中はしっとりの最高のお肉が出来上がるのだとか。これはジビエだけでなく、家で肉を焼く時に試してみたい。
ジビエをおいしく調理するコツ③低温湯通し
低温での湯通しも効果的。水の状態から肉を入れ、低温から徐々に肉に火を入れていきます。60度を目安に茹でていくことで、肉は固くならずに臭みを抜くことができるそうです。
あまり高温で火を入れるとタンパク質が凝固して肉が固くなってしまいます。これはジビエに限ったことではありませんが、特にジビエは野生動物で筋肉質なので余計に固くなってしまうから注意!
(親に嫌な目線で見られながらもしゃぶしゃぶ実験の末、信頼を勝ち取った記事がわかりやすいです。)
そうすると、びっくりするほどアクが出る、このアクに臭みがあるので、下準備をしておけばより美味しくいただけるということでした。全体的に肉が白くなったら取り出すタイミング、水で冷やしておきます。
ジビエをおいしく保存するコツ
ちなみに保存する際は、冷凍庫に入れておけばかなり持ちますが、冷凍はラップ二重にしてで新聞紙でくるみ、直接冷気があたらないようにするとよいということ。1枚だと隙間から冷気が入って冷凍焼けしてしまうので、より厳重にしておきましょう。
ということで、今回作った料理はこちらです。まったく臭いやくさみなどは感じませんでした!きちんとした処理&調理方法ならまったく違和感なく食べられますね!
プチ雑学!諏訪大社の鹿食免
過去日本でも肉食を禁止する動きがあった。仏教の普及から肉食がタブー化されてきたが中でも、犬将軍といわれた徳川綱吉の「生類憐れみの令」はよく覚えている、あまりにもその他の施策とのGAPがあり、何だこれは、、、と思った記憶があります。
それはさておき、当時の人も、肉食いたい!となるわけで、そこで諏訪大社であります。諏訪大社は狩猟の神であり、神に捧げる狩猟は許されていたということで、鹿食免(かじきめん)という御免状を取得することができたのだとか。
それで「おれも!おれも!!」ということで全国に分社され、いまでは1万社以上の分社が全国にあるのだとか。諏訪という名前の神社が多いのは、狩猟との関係があるという説があります。
※ここからは終了後、解体作業している写真もありますので、少しグロい写真も。苦手な人はこの辺で離脱してくださいね(ΦωΦ)
鹿の解体ワークショップ
鹿の解体体験は、猟師工房さんで行ってきました。今回解体したのは鹿でした。後ろ足を吊るした状態で、血抜きを行い、内臓が取り除かれた状態で準備されていました。
まずは、皮を剥ぎ、続いて肉を部位ごとに解体していきます。体の作りに従っていけば素人でもおそらく解体できると思います。
またナイフを使うのに力はいらない(むしろ込めてはいけない)、力が入っている、入れなければならないとすると、それはナイフの使い方が間違っていることを意味します。
当然力を込めれば切れるのですが、部位を横断して肉を傷つけ、痛めてしまうことになりますので、部位ごとで解体することができなくなってしまいます。
ポイントは、肉に平行に歯を向け、肉と皮の間を沿うようにして、切るというよりは剥がしていくと言ったほうがニュアンスとしては近いです。
そして、できるだけ肉が残るように処理をしていくことを意識します、これは当然野生動物への礼儀です。
肉の部位を更に細かく切っていくときにも、体の作り(流れ)に従って処理していくイメージです。これは動物の体の作りがどのようになってるのかを学んでいけば更に解体作業はスムーズにいくんだろううなあと思います。
この後は、きちんとすべての部位をとりわけ、きれいに骨と肉を分けていきました。印象としては、知識でしっているのと実際に自分で体験してみるのとでは全く印象が違うということでした。
写真で見るとすごく残酷な気もするのですが、現場で体を動かしているときには残酷な感じやそういったマイナスな印象は全く受けず、残らずいただきたいという、必死さしか印象に残っていません。参加してよかったなあと思います。
どのようにして自分たちのもとに、お肉が届くのか、経験して見ることでわかることは大変多くあると思います、ぜひ機会があれば狩猟体験や解体体験に参加してみて下さい。知識だけ詰め込むよりも実際、体験してみることで気づけることが多いです。百聞は一見にしかず!今起こっている現状を少しでも興味を持ってもらえればいいなあと思います。
猟師工房HPイベントもいろいろやってます