日記を初めて、さらに日常を懐疑的に眺めるようになった。
今日目に止まったのはポストに書かれた手書きの文字。
「チラシ イレルナ!!!」
写真も文字も似たところがあると思う。
写真には、静止することのない世界の時を止めてしまい、
前後の世界を置いてけぼりにしてしまう性質がある。
故に解釈の余地は見る人に委ねられる。
一方で文字もまた心の中で繰り返し沸き起こっているはずの感情の動き、
前後の文脈を削り取ってしまうんじゃないだろうかと思う。
「チラシ イレルナ!!!」
人間は想像力の持ち主である、日本人は配慮と気遣いの人種である。
僕は姿勢を正し、水を一口、口に含む。
目を閉じて、想像力を働かせると、
この「チラシ イレルナ!!!」の文脈が浮かんでくる。
もちろん読みやすさへの配慮、語尾への気遣いも忘れない、僕は日本人なのだ!
なんとか頭の中でこの人の気持ち、葛藤が見えてきた、
どうやら同じようなワードを連呼しているようだ。
「チラシいれるな!」
「チラシいれるなよ!?」
「絶対にチラシいれるなよ?」
ああ、この人は寂しいのだ、この人は不器用なのだ、
この人はきっと欲しくてたまらないのだ。
今度チラシの束をまとめて入れといてあげようかな、
僕は優しいのだ。